時代を生き抜いてきたUSB規格と期待の USB Type-C について
2018.05.27/Sun/09:45:20
【USB前夜】
USBは「ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)」の略で、その最初の規格 USB 1.0 は 1996年1月に発行されました。その後規格が拡張されつつ、2018年5月現在の最新規格は USB 3.2、実に22年余も継続しているデジタル機器間汎用接続のデファクトスタンダード規格です。
その昔、現在普及している個人向けコンピューターの先駆けになったのが、IBM が送り出した「IBM PC」(1981年)。この系譜が「IBM PC AT」(1984年)を経て、他社が販売する「AT互換機」が興隆。現在の Windows 系パソコンの姿となっています。
現在でもノート以外のパソコンはキーボードやマウス、ディスプレイ等を本体と接続する必要があります。その PC AT 互換機の当時の接続インタフェースはこんなもの。
ほとんどの外部接続がそれぞれ異なった規格・端子となっていました。それにはそれなりの理由がありました。当時の技術が不足していて、それぞれの接続対象機器に適した接続規格・端子が必要だったということもあります。また、何億円もするのが当たり前のコンピューターの世界から派生したパソコンはせいぜい100万円。劇的に低コスト製品となったパソコンに対して、大きなコストを投じて新規格を策定するよりも、うまく既存の規格を流用していく意識・背景があったこともあるでしょう。
その後、パソコンが世に広がって行くにつれ、「接続方式がまちまちで不便だね」という声も広がり、パソコンやパーソナル機器向けに使い勝手の良い汎用接続規格が制定されました。それが USB「ユニバーサル・シリアル・バス」です。
【USB の変遷】
冒頭に述べた通り、USB規格はその時々のニーズや性能要件を吸収しながら拡張を繰り返し、常に技術革新が発生するドッグイヤーさながらのパソコン業界で、22年もの長期間生き延びて来ました。それには以下のような歴史があります。
USB規格は、上記のようなシリアルポートやIEEE 1284パラレルポート、PS/2コネクタを代替を目標に、コンパック、ディジタル・イクイップメント・コーポレーション (DEC)、IBM、インテル、マイクロソフト、日本電気株式会社 (NEC)、ノーテルネットワークスの7社が合同で1994年に開発しました。そのUSB規格は成功を博し、今に至ります。
その成功の要因には以下があるといわれています。
一時、 Firewire(IEEE1394)が転送速度 400M bit/s を誇っていた頃は Firewire とのつば競り合いがありましたが、USB 2.0(転送速度480 M bit/s)が制定され、その普及とともに USB の一人勝ちとなりました。
今や、キーボード、マウス、プリンタ、ストレージ、スキャナをはじめ、Wi-Fi アダプタやサウンドアダプタなど、ディスプレイ接続以外のほとんどの外部機器接続は USB 接続で賄えるようになりました。
【USB Type-C】
ちょっと紛らわしいのですが、今まで述べてきたUSBは「規格」の話。同時にUSBには「端子」の概念があります。例えば同じ USB 2.0 でも、様々な「端子」が存在します。
これはパソコンなどに搭載されている「Type-A端子」

これはスマートフォンなどに搭載されている「Micro-B」端子。

旧来の USB 規格には「ホスト」(親機)と「ゲスト」(子機)という概念があり、それは一般的にケーブル端子で区別されます。例えばホスト側には、この Type-A 端子が使われ、ゲスト側では、この Micro-B 端子がよく使われます。
ところが、この Micro-B 端子、利用に際して不満が多く語られていました。代表的なものは下記。
そのような問題の解消を目指し、さらなる利便性を求めてUSB規格の最新端子「USB Type-C」が決められました。

まず、Type-C 端子は、上下の向きがありません。180°回転してもどの向きでも差し込むことができ、問題なく動作するようになっています。その理由がこちら。USB Type-C 端子のピン配置図です。

上記を見ると、180度回転しても、必ず同じ信号区分のピンに当たることがわかります。うまく考えられています。
耐久性の観点では、micro-B の2倍の1万回以上の抜き差しに耐える仕様となりました。その設計の一端を示す比較がこちら。

Type-C 端子は Micro-B 端子に比べ、コネクタ外周部の金属部の長さが長く、がっしりしています。長さが短く、金属部の剛性が低いと、てこの原理で接続時の端子内部に比較的大きな力が加わりやすく、コネクタや機器内部側の劣化を引き起こしやすくなりますが、Type-C 端子を設計するにあたっては、その不都合の改善が図られています。
その他、Type-C 端子では下記のような拡張が施されています。
Type-C 端子が広く普及すると、両端が Type-C のケーブル一本で、映像信号も含め、ほぼすべての周辺機器接続が電源込みで使えることになり、非常に便利な世界が広がります。そのように、USB Type-C は画期的な端子仕様です。
【Type-Cケーブルの利用時の注意点】
非常にいいことずくめの USB Type-C 端子ですが、注意すべき点もあります。まず、目的に応じてケーブル自体に区別が発生することに留意する必要があります。よく流通している Type A ⇔ Type-C Type のケーブルでは、USB PD はできません。また、ケーブル内の信号線のコネクタ結線如何では、Type-C 端子なのに、USB 2.0 ケーブルというものもあり得ます。したがって、Type-C 端子が付いている USB ケーブルであっても、その種類に留意しなくてはなりません。
また、最新のケーブル仕様であるため、仕様を逸脱した粗悪ケーブルを利用すると、接続機器に悪影響や損傷jが発生する可能性もあります。例えば、Type-C 側の機器が、電源供給を相手側に要求する場合を想定します。 Type-C側から見て、相手側が USB 3.1 仕様なのか USB2.0 仕様なのかが判別できないと相手側に USB 2.0 では定められていない大容量の電力を要求し、電力供給側が過負荷になる可能性があるわけです。
そのため、USB Type-C の仕様書では、相手側の USB 仕様が 2.0 である場合は、ケーブル内に 56kΩの抵抗を使用することが定められています。粗悪なケーブルでは、その仕様に沿っていないケーブルであることもありうるわけです。
したがって、Type-C 端子を持つケーブルは、信頼できる商品を求めるのが大事と思われます。最近では100円均一ショップでも Type-C端子の USB ケーブルが売られていますが、安直に購入せず、信頼のおける口コミやレビューを経ていることを確認することが重要です。
【まとめ】
USB 3.1、USB Type-C ケーブルは、今までの数々の課題を解決する非常に期待される商品です。しかし、利用目的に応じて、ケーブル自体のバリエーションがあることと、接続機器の保護のため、信頼できる商品を利用することが大事です。
【関連ページ】
RSコンポーネンツではUSBケーブルが豊富に揃っています。
Wikipedia USB Type-C 解説ページ
Wikipedia ユニバーサル・シリアル・バス 解説ページ
-----
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。
USBは「ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)」の略で、その最初の規格 USB 1.0 は 1996年1月に発行されました。その後規格が拡張されつつ、2018年5月現在の最新規格は USB 3.2、実に22年余も継続しているデジタル機器間汎用接続のデファクトスタンダード規格です。
その昔、現在普及している個人向けコンピューターの先駆けになったのが、IBM が送り出した「IBM PC」(1981年)。この系譜が「IBM PC AT」(1984年)を経て、他社が販売する「AT互換機」が興隆。現在の Windows 系パソコンの姿となっています。
現在でもノート以外のパソコンはキーボードやマウス、ディスプレイ等を本体と接続する必要があります。その PC AT 互換機の当時の接続インタフェースはこんなもの。
対象 | 規格 | 端子 |
---|---|---|
キーボード | PS2 | ミニDIN 6ピン |
マウス | シリアル | DSUB 9ピン |
ディスプレイ | VGA | アナログRGB(HD-15) |
プリンタ | IEEE 1284 | DB-24 |
外部記憶装置 | SCSI-2 | Micro DB50(50ピン ハーフピッチ) |
ほとんどの外部接続がそれぞれ異なった規格・端子となっていました。それにはそれなりの理由がありました。当時の技術が不足していて、それぞれの接続対象機器に適した接続規格・端子が必要だったということもあります。また、何億円もするのが当たり前のコンピューターの世界から派生したパソコンはせいぜい100万円。劇的に低コスト製品となったパソコンに対して、大きなコストを投じて新規格を策定するよりも、うまく既存の規格を流用していく意識・背景があったこともあるでしょう。
その後、パソコンが世に広がって行くにつれ、「接続方式がまちまちで不便だね」という声も広がり、パソコンやパーソナル機器向けに使い勝手の良い汎用接続規格が制定されました。それが USB「ユニバーサル・シリアル・バス」です。
【USB の変遷】
冒頭に述べた通り、USB規格はその時々のニーズや性能要件を吸収しながら拡張を繰り返し、常に技術革新が発生するドッグイヤーさながらのパソコン業界で、22年もの長期間生き延びて来ました。それには以下のような歴史があります。
規格 | 仕様発行時期 | 最大データ転送速度 | 給電能力 (5V) |
---|---|---|---|
USB 1.0 | 1996年1月 | 12 Mbit/s | - |
USB 1.1 | 1998年9月 | 12 Mbit/s | - |
USB 2.0 | 2000年4月 | 480 Mbit/s | 500 mA |
USB 3.0 | 2008年11月 | 5 Gbit/s (Gen 1) | 900 mA |
USB 3.1 | 2013年8月 | 10 Gbit/s (Gen 2) | 1000 mA |
USB 3.2 | 2017年9月25日 | 20 Gbit/s (Gen 2x2) |
USB規格は、上記のようなシリアルポートやIEEE 1284パラレルポート、PS/2コネクタを代替を目標に、コンパック、ディジタル・イクイップメント・コーポレーション (DEC)、IBM、インテル、マイクロソフト、日本電気株式会社 (NEC)、ノーテルネットワークスの7社が合同で1994年に開発しました。そのUSB規格は成功を博し、今に至ります。
その成功の要因には以下があるといわれています。
- シリアル接続とすることで細いケーブル、小さな端子を実現できたこと
- ホットプラグ(活線抜き差し)をサポートしたこと
- Windows 98 が USB 1.1 を公式サポートし、デファクト化を進める上での利用者マスを速やかに獲得できたこと
- Windows 98 公式サポートにより「Plag and Play」が実現されたこと
- 特許で知財を守ると共に、特許使用料を無償とし、接続機器ベンダーの参入障壁を低くしたこと
- 規格を拡張する際、可能な限り以前の規格との互換性を維持したこと
一時、 Firewire(IEEE1394)が転送速度 400M bit/s を誇っていた頃は Firewire とのつば競り合いがありましたが、USB 2.0(転送速度480 M bit/s)が制定され、その普及とともに USB の一人勝ちとなりました。
今や、キーボード、マウス、プリンタ、ストレージ、スキャナをはじめ、Wi-Fi アダプタやサウンドアダプタなど、ディスプレイ接続以外のほとんどの外部機器接続は USB 接続で賄えるようになりました。
【USB Type-C】
ちょっと紛らわしいのですが、今まで述べてきたUSBは「規格」の話。同時にUSBには「端子」の概念があります。例えば同じ USB 2.0 でも、様々な「端子」が存在します。
これはパソコンなどに搭載されている「Type-A端子」

これはスマートフォンなどに搭載されている「Micro-B」端子。

旧来の USB 規格には「ホスト」(親機)と「ゲスト」(子機)という概念があり、それは一般的にケーブル端子で区別されます。例えばホスト側には、この Type-A 端子が使われ、ゲスト側では、この Micro-B 端子がよく使われます。
ところが、この Micro-B 端子、利用に際して不満が多く語られていました。代表的なものは下記。
- 端子に向きがあるため、むやみに差し込んでも装着できない
- 利用しているうちに端子がぐらつき、パカパカになり、接触が悪くなったり、すぐにケーブルが外れるようになってしまった
そのような問題の解消を目指し、さらなる利便性を求めてUSB規格の最新端子「USB Type-C」が決められました。

まず、Type-C 端子は、上下の向きがありません。180°回転してもどの向きでも差し込むことができ、問題なく動作するようになっています。その理由がこちら。USB Type-C 端子のピン配置図です。

上記を見ると、180度回転しても、必ず同じ信号区分のピンに当たることがわかります。うまく考えられています。
耐久性の観点では、micro-B の2倍の1万回以上の抜き差しに耐える仕様となりました。その設計の一端を示す比較がこちら。

Type-C 端子は Micro-B 端子に比べ、コネクタ外周部の金属部の長さが長く、がっしりしています。長さが短く、金属部の剛性が低いと、てこの原理で接続時の端子内部に比較的大きな力が加わりやすく、コネクタや機器内部側の劣化を引き起こしやすくなりますが、Type-C 端子を設計するにあたっては、その不都合の改善が図られています。
その他、Type-C 端子では下記のような拡張が施されています。
- 最大100Wの電力を伝達する USB-PD(Power Delivery)に対応
- 両端を Type-C 端子とするケーブル利用時のゲスト、ホストの自動切換え
- 最新の USB3.1 規格に準拠のため、10Gbit/s のデータ転送が可能
- オルタネート・モードを利用することで、映像信号端子として利用可能(HDMI、Thunderbolt、DisplayPort端子相当)
Type-C 端子が広く普及すると、両端が Type-C のケーブル一本で、映像信号も含め、ほぼすべての周辺機器接続が電源込みで使えることになり、非常に便利な世界が広がります。そのように、USB Type-C は画期的な端子仕様です。
【Type-Cケーブルの利用時の注意点】
非常にいいことずくめの USB Type-C 端子ですが、注意すべき点もあります。まず、目的に応じてケーブル自体に区別が発生することに留意する必要があります。よく流通している Type A ⇔ Type-C Type のケーブルでは、USB PD はできません。また、ケーブル内の信号線のコネクタ結線如何では、Type-C 端子なのに、USB 2.0 ケーブルというものもあり得ます。したがって、Type-C 端子が付いている USB ケーブルであっても、その種類に留意しなくてはなりません。
また、最新のケーブル仕様であるため、仕様を逸脱した粗悪ケーブルを利用すると、接続機器に悪影響や損傷jが発生する可能性もあります。例えば、Type-C 側の機器が、電源供給を相手側に要求する場合を想定します。 Type-C側から見て、相手側が USB 3.1 仕様なのか USB2.0 仕様なのかが判別できないと相手側に USB 2.0 では定められていない大容量の電力を要求し、電力供給側が過負荷になる可能性があるわけです。
そのため、USB Type-C の仕様書では、相手側の USB 仕様が 2.0 である場合は、ケーブル内に 56kΩの抵抗を使用することが定められています。粗悪なケーブルでは、その仕様に沿っていないケーブルであることもありうるわけです。
したがって、Type-C 端子を持つケーブルは、信頼できる商品を求めるのが大事と思われます。最近では100円均一ショップでも Type-C端子の USB ケーブルが売られていますが、安直に購入せず、信頼のおける口コミやレビューを経ていることを確認することが重要です。
【まとめ】
USB 3.1、USB Type-C ケーブルは、今までの数々の課題を解決する非常に期待される商品です。しかし、利用目的に応じて、ケーブル自体のバリエーションがあることと、接続機器の保護のため、信頼できる商品を利用することが大事です。
【関連ページ】
RSコンポーネンツではUSBケーブルが豊富に揃っています。
Wikipedia USB Type-C 解説ページ
Wikipedia ユニバーサル・シリアル・バス 解説ページ
-----
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。
カテゴリ: パソコン・インターネット
go page top
« 手持ちのイヤホンのチューンナップに最適な低反発ウレタンイヤーピース
湾岸地帯ならではの絶景サイクリングコース。若洲海浜公園 »
この記事に対するコメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| #
2018/05/28 12:34 * 編集 *
2018/05/28 12:34 * 編集 *
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| #
2018/05/28 12:35 * 編集 *
2018/05/28 12:35 * 編集 *
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| #
2018/06/08 18:46 * 編集 *
go page top
2018/06/08 18:46 * 編集 *
トラックバック
承認制としています。無関係なものは承認されない場合があります。
トラックバックURL
→https://ace.reviewmagic.jp/tb.php/756-49d357b7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバックURL
→https://ace.reviewmagic.jp/tb.php/756-49d357b7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| h o m e |