スターメーアーチャーの「カラ割り」をしてみた
2011.05.08/Sun/00:26:10
【スターメー・アーチャー AW-3 内装ハブ】
英国の自転車パーツメーカー Sturmey Archer が 1936年に発売した自転車用内装型3速後輪ハブです。変速レシオは 0.75, 1.00, 1.33 となっています。ローとトップの比率は177%。一般的な外装6段変速ギアのトップは14T、ローが28Tというコンビネーションが多く、この場合はローとトップの比率は 200%。このことを考えると、この AW-3 という内装ギアは、3段の割りにはワイドなギアレシオを持っていることがわかります。
【メンテをしよう】
丈夫にできているため、ほとんどメンテフリーな変速機なのですが、最近、下り坂でペダルを踏まずに後輪を空回りさせるような場面で、変速機の空転音が若干大きくなったような気がしたので、GWを利用してメンテを行うことにしました。
以前、このようなメンテを行ったことがあります(スターメー・アーチャー AWタイプ 内装3段変速機のメンテナンス)。このときは、ハブシェルからは本体を引き出さずに、玉押し部分だけを取って、清掃・注油を行いました。
今回は、細かい部分も清掃して油を行き渡らせたかったため、「カラ割り」(シェルから外すこと)を行います。
そのためには、正式にはハブシェルにきつく締めこまれている本体を緩めるために、このような「Cスパナ」が必要とされています。

(C Spanner)
ただ、これは入手性と価格、汎用性に難があるので、今回は少々手荒なことを行って外します。貫通ドライバーとハンマーを利用してこのように外します。

緩める方向は通常のネジを緩める方向と同じ「反時計まわり」です。玉押しが締めつけられたままだと大きく緩んでくれないので、この作業を行う前には左側の玉押しは外しておきましょう。
数回、ハンマーでパンチすると、通常はネジがゆるんで外れます。これが外した姿。内部の部品は、見事なほど「固定されていません」。シェルがかぶさることで脱落をを防ぐ方式になっています。ねじ、ボルト・ナットなどは一本もありません。美しい設計の極致です。したがって、内部を抜くときは、右側の車軸を下にして、ハブシェルを上方にゆっくり抜くようにします。
抜けました。ハブシェルの内側には、ラチェットが噛む歯型が作られています。

これが抜きだした本体です。

次に、スプロケットが付いているギアリング側のカバーを抜きとると、このように遊星ギアの部分が見られるようになります。このとき注意すべきは、この段階では、左側の車軸を下にして抜きとることです。さもないと、遊星ギアを固定している軸が簡単に落下し、遊星ギアも脱落してしまいます。

この後、各部品を丁寧に洗浄し、注油を行って組みあげます。内部の部品には、遊星歯車のように高速に回転したり、ラチェットのように高速に動作する部品がありますので、グリスを適用してはいけません。適切な粘度を持ったオイルを適用します。
分解するときに注意する点は、ラチェットを外側に押し出すための Paul Spring というばねは非常に細くて繊細にできているため、破損しやすいことと、適切な方向で保持してあげないと各部品がすぐに脱落してしまうことです。できればしっかりした作業台に車軸を保持できるような「バイス」を設置して、それに変速機を固定して作業すると便利ですね。今度買おうかと思います。
【メンテ完了】
やはり、メンテを行うと良いことがあります。動作音が明らかに小さくなりました。また今までは油切れを起こしていたのだと思いますが、摩擦ロスが明らかに減りました。時間と手間をかけた分だけのことはありました。
以下の工具があると便利です。
カラ割りをするためのドライバーは、必ず「貫通ドライバー」でないといけません。打撃のパワーを柄が吸収してしまうと瞬間的な力が得られません。また、上記エンジニア アンヴィルバイスは、金属製の台座が付いていて、非常に便利です。Black and Decker 社のワークベンチは、軽量の廉価製品と比べると、そこそこの重量があって安定感があります。動かないように足をかけるステップが付いているところもポイントです。
【関連ページ】
スターメー・アーチャー AW-3 のオーバーホール
スターメーアーチャー AW-3 のコアパーツの交換
スターメー・アーチャー AWタイプ 内装3段変速機のメンテナンス
AW ハブギアのメンテナンスマニュアル(PDF)
Sturmey Archer 社公式ホームページ
Stermey Archer の分解と再組み立て(YouTube)
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最後までご覧いただきまして、どうもありがとうございました。
英国の自転車パーツメーカー Sturmey Archer が 1936年に発売した自転車用内装型3速後輪ハブです。変速レシオは 0.75, 1.00, 1.33 となっています。ローとトップの比率は177%。一般的な外装6段変速ギアのトップは14T、ローが28Tというコンビネーションが多く、この場合はローとトップの比率は 200%。このことを考えると、この AW-3 という内装ギアは、3段の割りにはワイドなギアレシオを持っていることがわかります。
【メンテをしよう】
丈夫にできているため、ほとんどメンテフリーな変速機なのですが、最近、下り坂でペダルを踏まずに後輪を空回りさせるような場面で、変速機の空転音が若干大きくなったような気がしたので、GWを利用してメンテを行うことにしました。
以前、このようなメンテを行ったことがあります(スターメー・アーチャー AWタイプ 内装3段変速機のメンテナンス)。このときは、ハブシェルからは本体を引き出さずに、玉押し部分だけを取って、清掃・注油を行いました。
今回は、細かい部分も清掃して油を行き渡らせたかったため、「カラ割り」(シェルから外すこと)を行います。
そのためには、正式にはハブシェルにきつく締めこまれている本体を緩めるために、このような「Cスパナ」が必要とされています。

(C Spanner)
ただ、これは入手性と価格、汎用性に難があるので、今回は少々手荒なことを行って外します。貫通ドライバーとハンマーを利用してこのように外します。

緩める方向は通常のネジを緩める方向と同じ「反時計まわり」です。玉押しが締めつけられたままだと大きく緩んでくれないので、この作業を行う前には左側の玉押しは外しておきましょう。
数回、ハンマーでパンチすると、通常はネジがゆるんで外れます。これが外した姿。内部の部品は、見事なほど「固定されていません」。シェルがかぶさることで脱落をを防ぐ方式になっています。ねじ、ボルト・ナットなどは一本もありません。美しい設計の極致です。したがって、内部を抜くときは、右側の車軸を下にして、ハブシェルを上方にゆっくり抜くようにします。
抜けました。ハブシェルの内側には、ラチェットが噛む歯型が作られています。

これが抜きだした本体です。

次に、スプロケットが付いているギアリング側のカバーを抜きとると、このように遊星ギアの部分が見られるようになります。このとき注意すべきは、この段階では、左側の車軸を下にして抜きとることです。さもないと、遊星ギアを固定している軸が簡単に落下し、遊星ギアも脱落してしまいます。

この後、各部品を丁寧に洗浄し、注油を行って組みあげます。内部の部品には、遊星歯車のように高速に回転したり、ラチェットのように高速に動作する部品がありますので、グリスを適用してはいけません。適切な粘度を持ったオイルを適用します。
分解するときに注意する点は、ラチェットを外側に押し出すための Paul Spring というばねは非常に細くて繊細にできているため、破損しやすいことと、適切な方向で保持してあげないと各部品がすぐに脱落してしまうことです。できればしっかりした作業台に車軸を保持できるような「バイス」を設置して、それに変速機を固定して作業すると便利ですね。今度買おうかと思います。
【メンテ完了】
やはり、メンテを行うと良いことがあります。動作音が明らかに小さくなりました。また今までは油切れを起こしていたのだと思いますが、摩擦ロスが明らかに減りました。時間と手間をかけた分だけのことはありました。
以下の工具があると便利です。
カラ割りをするためのドライバーは、必ず「貫通ドライバー」でないといけません。打撃のパワーを柄が吸収してしまうと瞬間的な力が得られません。また、上記エンジニア アンヴィルバイスは、金属製の台座が付いていて、非常に便利です。Black and Decker 社のワークベンチは、軽量の廉価製品と比べると、そこそこの重量があって安定感があります。動かないように足をかけるステップが付いているところもポイントです。
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スターメーアーチャー AW-3 のコアパーツの交換
スターメー・アーチャー AWタイプ 内装3段変速機のメンテナンス
AW ハブギアのメンテナンスマニュアル(PDF)
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Stermey Archer の分解と再組み立て(YouTube)
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カテゴリ: 自転車・アウトドア
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