ボトムブラケットのメンテナンス
2011.05.05/Thu/20:17:14
【ボトム・ブラケットとは】
ボトム・ブラケットとはペダル・クランクのシャフトの軸受けのことです。人間の漕ぐ力を回転運動に変換する大事な部分です。この部分の回転が滑らかでなかったり、ガタついたりしていると、走る楽しみとパワーの大きなロスになってしまいます。
またこの部分は大きな力が加わる部分なので、通常、自転車の中で最も大きな(したがって強い)玉のベアリングが使われています。
最近の自転車ではボトム・ブラケットにはシャフトとベアリングが一体構造になった「カートリッジ型」が使われていて、メンテフリーのものが増えていますが、私の乗っているこの自転車のBBはカートリッジ型ではなくクラシックな「玉押し」タイプで、定期的なメンテナンスが必要です。
【クランクの取り外し】
BBのメンテを行うためには、クランクを取り外さなくてはなりません。今回メンテする自転車のクランクは「コッタレス・クランク」と呼ばれ、正四角形のテーパー加工が施されたシャフトに取り付けるタイプです。下の写真は、クランクを外した後の姿。シャフトの先が四角くなっています。この四角の部分にクランクを取り付けるためクランクが空回りすることが防止されます。

クランクはボルトによって相当な力でねじ込まれているため、専用工具がないと取り外すことができません。このシマノの専用工具を使います。

(SHIMANO TL-FC10)
この工具の片面は、このように14mmナットを回せるボックスレンチになっています。

反対側は、このようにクランクの軸穴部分に外側からねじ込むネジ山が付いています。

この工具を使ってクランクを取り外します。
まず、クランクの軸受け部分をふさいでいる樹脂製のカバーを取り外します。これは小型のマイナスドライバー等を使ってゆっくりと全体を浮かしてゆけば、特に回すことなく外すことができます。

(軸受け穴をふさいでいるカバー)
このカバーを取り外すと、クランクを軸の内側へと固定しているナットが見えます。

(クランクを固定しているナット)
このナットを TL-FC10 のボックスレンチ側を使って緩めて取り外します。取り外し方は、ナットにこのように工具のボックスレンチ側をはめ込み、モンキーレンチを使って反時計回りに回せば外れます。このナットは左右のクランクで回転方向は変わらず、左右どちらでも反時計回りで緩みます。

ナットを外しただけではクランクは外れません。強力な力で四角形のテーパーに食い込んでいるからです。そこで、 TL-FC10 の反対側をクランクの軸受け穴にねじ込みます。その前に TC-FC10 自体を反時計回りに回し、本体を伸ばしておく必要があります。
クランクの軸受けの穴の内面には、規格に沿ったネジ山が切ってあり、規格にあうクランクの場合は、TL-FC10 が手で回すだけで軽く奥まで入ってゆきます。軽く入ってゆかない場合は、規格が違うか、ネジ山を斜めに削ってゆく方向になっているので、強い力で無理に回さないようにします。適合する場合は、手で回すだけでするすると奥まで入ります。

奥までしっかりねじ込んでから、このように外に飛び出ている部分をモンキーレンチで挟み、時計回りに回してゆきます。すると工具の先端部分がBBシャフトの先端部分に当たり、さらに回してゆくとネジを押しこむ力で、クランクがBBシャフトからゆっくり引き抜かれてゆきます。

すると、めでたくクランクが外れます。これは、ギアがある右側。

ギアのない左側も同様に、クランクを外します。

すると、このようにBBがむき出しになります。

このように、BBをメンテするためにはクランクを外さなければならず、専用工具が必要です。ロードバイクでは、クランクの形状と規格が違うので、TL-FC10 は利用できない可能性があります。必ず適合する工具を確認しましょう。
【BBの分解・清掃・グリスアップ】
BBの玉押し部は、切り欠きの付いたロックナットで固定されています(上の写真の右上部分)。分解するためには、この工具が必要になります。「フックレンチ」です。

このフックレンチを使って、ロックナットを緩めます。こんな感じで利用します。このロックナットは、自転車のクランクギアではない側(左側)に存在します。その場合は緩める方向は「反時計回り」です。下の写真は、「締める」方向なので注意。

ロックナットが取れました。その後、玉押しブラケットをやはり反時計回りに回して緩めて外します。

ギアの付く反対側(右側)の玉押しは、緩める方向が逆(時計回り)なので注意します。

取れました。BBの中はネジ山が切ってあるだけで、こんな「中空」です。この機会に、BBの内部をきれいに掃除しておきましょう。

こちらが、外したBB構成パーツ。汚れているので、クリーナーで洗います。

汚れとグリスを洗い流して、このようにきれいになりました。

その後、各パーツをグリスアップします。このBBは比較的低速で回転し、強い力が加わる部分なので、利用する油脂は必ず「グリス」を使います。通常のオイルを使うとすぐに油膜切れを起こし、問題が発生します。また、クランクが入る軸のテーパー部分にも忘れずにグリスを塗っておきます。錆付きによる固着を防ぐためです。

あとは、構成部品を左右間違えずにBBに挿入し、玉押しを固定して軸の回転具合を調整します。シャフトには左右がありますので注意が必要です。シャフトにはボールベアリングを受ける「山」が軸上にありますが、その山から先端までが「長い方」にギア付きのクランクが入ります。つまり長いほうが右側になるようにして挿入します。
右側の玉押しから先にねじ込みます。こちらは当たりを調節する必要はありません。広口モンキーレンチで反時計回りに回して締めこみます。その後、左側の玉押しをねじ込みます。こちらは「玉当たり」を調節する必要があるので注意が必要です。軸とベアリングの隙間がなく、なおかつ指で回してスムーズに回るように調節し、その状態が持続するようにロックナットで固定します。

ロックナットを締めこむと、それにつられて玉押しナットも若干締まる方向に動いてしまいます。したがって、玉押しナットが回ってしまう分を事前に考慮して、左側の玉押しは、ちょっと緩めにしておくのがコツです。
【最後に】
上り坂を立ち漕ぎで上るとき、ペダルがガクガクしたり、ギシギシ音がする場合は、BBを調節すれば治るかもしれません。この作業を自転車店で行ってもらうと、1,000円程度はかかると思われます。自分でやれば、グリスもふんだんに盛りつけることもできますし、ベアリング調整の追い込みも時間を気にすることなくこだわれます。
【関連ページ】
スターメー・アーチャー AWタイプ 内装3段変速機のメンテナンス
折りたたみ自転車前輪ハブのメンテナンス
ペダルのベアリングのメンテナンス
自転車ヘッド部のメンテナンス
-----
最後までご覧いただきまして、どうもありがとうございました。
ボトム・ブラケットとはペダル・クランクのシャフトの軸受けのことです。人間の漕ぐ力を回転運動に変換する大事な部分です。この部分の回転が滑らかでなかったり、ガタついたりしていると、走る楽しみとパワーの大きなロスになってしまいます。
またこの部分は大きな力が加わる部分なので、通常、自転車の中で最も大きな(したがって強い)玉のベアリングが使われています。
最近の自転車ではボトム・ブラケットにはシャフトとベアリングが一体構造になった「カートリッジ型」が使われていて、メンテフリーのものが増えていますが、私の乗っているこの自転車のBBはカートリッジ型ではなくクラシックな「玉押し」タイプで、定期的なメンテナンスが必要です。
【クランクの取り外し】
BBのメンテを行うためには、クランクを取り外さなくてはなりません。今回メンテする自転車のクランクは「コッタレス・クランク」と呼ばれ、正四角形のテーパー加工が施されたシャフトに取り付けるタイプです。下の写真は、クランクを外した後の姿。シャフトの先が四角くなっています。この四角の部分にクランクを取り付けるためクランクが空回りすることが防止されます。

クランクはボルトによって相当な力でねじ込まれているため、専用工具がないと取り外すことができません。このシマノの専用工具を使います。

(SHIMANO TL-FC10)
この工具の片面は、このように14mmナットを回せるボックスレンチになっています。

反対側は、このようにクランクの軸穴部分に外側からねじ込むネジ山が付いています。

この工具を使ってクランクを取り外します。
まず、クランクの軸受け部分をふさいでいる樹脂製のカバーを取り外します。これは小型のマイナスドライバー等を使ってゆっくりと全体を浮かしてゆけば、特に回すことなく外すことができます。

(軸受け穴をふさいでいるカバー)
このカバーを取り外すと、クランクを軸の内側へと固定しているナットが見えます。

(クランクを固定しているナット)
このナットを TL-FC10 のボックスレンチ側を使って緩めて取り外します。取り外し方は、ナットにこのように工具のボックスレンチ側をはめ込み、モンキーレンチを使って反時計回りに回せば外れます。このナットは左右のクランクで回転方向は変わらず、左右どちらでも反時計回りで緩みます。

ナットを外しただけではクランクは外れません。強力な力で四角形のテーパーに食い込んでいるからです。そこで、 TL-FC10 の反対側をクランクの軸受け穴にねじ込みます。その前に TC-FC10 自体を反時計回りに回し、本体を伸ばしておく必要があります。
クランクの軸受けの穴の内面には、規格に沿ったネジ山が切ってあり、規格にあうクランクの場合は、TL-FC10 が手で回すだけで軽く奥まで入ってゆきます。軽く入ってゆかない場合は、規格が違うか、ネジ山を斜めに削ってゆく方向になっているので、強い力で無理に回さないようにします。適合する場合は、手で回すだけでするすると奥まで入ります。

奥までしっかりねじ込んでから、このように外に飛び出ている部分をモンキーレンチで挟み、時計回りに回してゆきます。すると工具の先端部分がBBシャフトの先端部分に当たり、さらに回してゆくとネジを押しこむ力で、クランクがBBシャフトからゆっくり引き抜かれてゆきます。

すると、めでたくクランクが外れます。これは、ギアがある右側。

ギアのない左側も同様に、クランクを外します。

すると、このようにBBがむき出しになります。

このように、BBをメンテするためにはクランクを外さなければならず、専用工具が必要です。ロードバイクでは、クランクの形状と規格が違うので、TL-FC10 は利用できない可能性があります。必ず適合する工具を確認しましょう。
【BBの分解・清掃・グリスアップ】
BBの玉押し部は、切り欠きの付いたロックナットで固定されています(上の写真の右上部分)。分解するためには、この工具が必要になります。「フックレンチ」です。

このフックレンチを使って、ロックナットを緩めます。こんな感じで利用します。このロックナットは、自転車のクランクギアではない側(左側)に存在します。その場合は緩める方向は「反時計回り」です。下の写真は、「締める」方向なので注意。

ロックナットが取れました。その後、玉押しブラケットをやはり反時計回りに回して緩めて外します。

ギアの付く反対側(右側)の玉押しは、緩める方向が逆(時計回り)なので注意します。

取れました。BBの中はネジ山が切ってあるだけで、こんな「中空」です。この機会に、BBの内部をきれいに掃除しておきましょう。

こちらが、外したBB構成パーツ。汚れているので、クリーナーで洗います。

汚れとグリスを洗い流して、このようにきれいになりました。

その後、各パーツをグリスアップします。このBBは比較的低速で回転し、強い力が加わる部分なので、利用する油脂は必ず「グリス」を使います。通常のオイルを使うとすぐに油膜切れを起こし、問題が発生します。また、クランクが入る軸のテーパー部分にも忘れずにグリスを塗っておきます。錆付きによる固着を防ぐためです。

あとは、構成部品を左右間違えずにBBに挿入し、玉押しを固定して軸の回転具合を調整します。シャフトには左右がありますので注意が必要です。シャフトにはボールベアリングを受ける「山」が軸上にありますが、その山から先端までが「長い方」にギア付きのクランクが入ります。つまり長いほうが右側になるようにして挿入します。
右側の玉押しから先にねじ込みます。こちらは当たりを調節する必要はありません。広口モンキーレンチで反時計回りに回して締めこみます。その後、左側の玉押しをねじ込みます。こちらは「玉当たり」を調節する必要があるので注意が必要です。軸とベアリングの隙間がなく、なおかつ指で回してスムーズに回るように調節し、その状態が持続するようにロックナットで固定します。

ロックナットを締めこむと、それにつられて玉押しナットも若干締まる方向に動いてしまいます。したがって、玉押しナットが回ってしまう分を事前に考慮して、左側の玉押しは、ちょっと緩めにしておくのがコツです。
【最後に】
上り坂を立ち漕ぎで上るとき、ペダルがガクガクしたり、ギシギシ音がする場合は、BBを調節すれば治るかもしれません。この作業を自転車店で行ってもらうと、1,000円程度はかかると思われます。自分でやれば、グリスもふんだんに盛りつけることもできますし、ベアリング調整の追い込みも時間を気にすることなくこだわれます。
【関連ページ】
スターメー・アーチャー AWタイプ 内装3段変速機のメンテナンス
折りたたみ自転車前輪ハブのメンテナンス
ペダルのベアリングのメンテナンス
自転車ヘッド部のメンテナンス
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最後までご覧いただきまして、どうもありがとうございました。
カテゴリ: 自転車・アウトドア
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