超弩級スポーツカー同士のゼロヨン対決(その2)
2010.05.15/Sat/16:18:11
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米国の自動車メディア「モータトレンド」の企画で、今度は日本の誇るスーパーカー2台、Lexus LFA と 日産 GT-R の 0-400m 対決(正確には1/4マイルなので0-402m対決)が行われ、そのビデオが YouTube に公開されています。 LEXUS LFA は価格でもパワーでも GT-R を凌駕しています。どちらが勝つのでしょうか。 |
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【LEXUS LFA】
トヨタの威信をかけて開発されたレクサスブランドの頂点に立つスーパースポーツです。レクサスは単なる高性能なだけでなく、感性に訴えかけるような高級感、プレミアム感をユーザーに提供することも目標に掲げられています。
エンジンはトヨタF1の流れをくむ 4.8L V10 エンジン。GT-R と同じ排気量ながら、パワーは GT-R をはるかに超える 560馬力を絞り出します。
この LFA は単に速いことだけを目的とせず、感性に訴えかける品質を目標に掲げたため、エンジンの音質にも徹底的にこだわっています。このクルマは高級車であると共に「スポーツカー」でもあるため、単に静音・遮音をするだけでは不足で、聞いて心地よいエンジンの音質の実現も目標とされています。そのため、このエンジン音のチューニングには楽器メーカーのヤマハが関わっていて、以下のようなサイトで LFA のエンジン音チューニングについて紹介されています。
スーパースポーツカー「LEXUS LFA」エンジン音のサウンドデザイン
以下に掲げる図は「音を創る」ために講じた工夫です。サージタンクからの吸気音をベースに、エンジン音を「聴かせる」ようにあえて伝送路を作ります。そして抜けるような中高域の音はダッシュボード上部から聴かせ、低域は運転席下部から放射するようにして、ドライバーがいい音に包まれるように設計されています。

音の伝達機構の全体構成イメージ(ヤマハHPより)

ドライバーへの音の空間的な伝達イメージ(ヤマハHPより)
このヤマハのHPでは、このようにしてチューニングされた極上のエンジン音も試聴できるようになっています(ここ)。
こうしたこだわりの結果、日本車の枠を飛び越え、世界の高級車としての枠でも極めて高額(3,750万円)であるにも関わらず、日本に割り当てられた台数が早々に掃けたため、予定申込期間が前倒しで終了してしまったほどの人気となりました。性能、品質、感性、こころざし、すべてが一級品。日本車の最高峰と言えるでしょう。
【日産 GT-R】
一般市販車で「ニュル最速」を目指した日本の誇るスーパーカーです。長らく日本のクルマの馬力自主規制値だった 280馬力を遥かに超えた 480馬力を引っさげて登場しました(マイナーチェンジ後は 485馬力にアップ)。ともかく素晴らしく速い車で、日本の GT カー選手権でも常勝を繰り返し、GT-Rで参戦の場合は他の車とハンデを付けるため余分なオモリを付けなければならないほど強いクルマです。

さて、これらのクルマの諸元・基本性能を表にしてまとめてみました。LFA はエンジンパワー(馬力)があり、車重も軽いです。したがって、パワーウエイトレシオは LFA が圧倒的有利な数値となっています。ところが LFA のエンジンは自然吸気であるため最大トルクは低く、トルクウエイトレシオは GT-R が上回っています。参考として GT-R のライバル、ポルシェ911ターボのデータも付けておきました。
表 LEXUS LFA vs 日産GT-R
【勝負の結果は】
LFA のエンジンはターボではありません。560馬力をたたき出しますが、その達成回転数は 8,700rpm。F1 のエンジンの流れをくむ典型的な高回転型エンジンでトルクは GT-R ほどありません。そのかわり車重が 1,480kg と極めて軽いため、トルク不足のハンデキャップを補っています。どちらが勝つのでしょうか。
LFA が僅差で勝利でした。いい勝負でした。
表 LEXUS LFA vs 日産GT-R 1/4マイル(0-402m)
動画を見てみると、最初のダッシュは GT-R が優っているのですが、中盤で LFA が GT-R に追いつき、その後は僅差(車の全長1台分)で LFA が勝利しています。最初のリードは GT-R のトルクの大きさと4輪駆動のトラクションの高さに起因していると思います。その後時速100km を越えたあたりでエンジンの回転数が乗ってきたLFAのパワーが本領発揮し GT-R を捉えます。その後は GT-R は食い下がるものの、車重と前面投影面積(≒空力)に勝る LFA がじりじりと引き離してゆくという状況だと思います。
もしかして LFA は負けるかもと考えていましたが、勝ちました。3,750万円のスポーツカーの面目躍如です。高級感だけではなく、走行性能も第一級品であることが証明されました。ただし、100km/h 以下のゾーンで GT-R に後れを取るということは、そのゾーンのカーブが連続し、加速力が重視される中・低速系のサーキット(日本によくあるタイプのサーキット)では LFA より GT-R が速いかもしれません。
また、GT-R はターボエンジン。割と低いエンジン回転域から大きなトルクを発生するため、そのパワーは日常的に利用しやすいものです。それに対して LFA のエンジンは自然吸気で高回転型、低速トルクは比較的低く、その速さを引き出すにはエンジンを高回転に保つ必要があり、どちらからというとマニア向けです。
このように両者は走行性能自体は同じゾーンにあるものの、まったくの同類ではなく、直接競合するものではありません。評価する軸を決めなければ、どちらかが秀でているかを決めることはできません。それぞれに、それぞれを好きなファンがいそうな、どちらも素晴らしいクルマだと思います。
【関連ページ】
超弩級スポーツカー同士のゼロヨン対決
ポルシェ 911ターボ vs 日産GT-R
[動画]レクサス LFA…超刺激的なV10サウンド
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最後までご覧いただきまして、どうもありがとうございました。
トヨタの威信をかけて開発されたレクサスブランドの頂点に立つスーパースポーツです。レクサスは単なる高性能なだけでなく、感性に訴えかけるような高級感、プレミアム感をユーザーに提供することも目標に掲げられています。
エンジンはトヨタF1の流れをくむ 4.8L V10 エンジン。GT-R と同じ排気量ながら、パワーは GT-R をはるかに超える 560馬力を絞り出します。

この LFA は単に速いことだけを目的とせず、感性に訴えかける品質を目標に掲げたため、エンジンの音質にも徹底的にこだわっています。このクルマは高級車であると共に「スポーツカー」でもあるため、単に静音・遮音をするだけでは不足で、聞いて心地よいエンジンの音質の実現も目標とされています。そのため、このエンジン音のチューニングには楽器メーカーのヤマハが関わっていて、以下のようなサイトで LFA のエンジン音チューニングについて紹介されています。
スーパースポーツカー「LEXUS LFA」エンジン音のサウンドデザイン
以下に掲げる図は「音を創る」ために講じた工夫です。サージタンクからの吸気音をベースに、エンジン音を「聴かせる」ようにあえて伝送路を作ります。そして抜けるような中高域の音はダッシュボード上部から聴かせ、低域は運転席下部から放射するようにして、ドライバーがいい音に包まれるように設計されています。

音の伝達機構の全体構成イメージ(ヤマハHPより)

ドライバーへの音の空間的な伝達イメージ(ヤマハHPより)
このヤマハのHPでは、このようにしてチューニングされた極上のエンジン音も試聴できるようになっています(ここ)。
こうしたこだわりの結果、日本車の枠を飛び越え、世界の高級車としての枠でも極めて高額(3,750万円)であるにも関わらず、日本に割り当てられた台数が早々に掃けたため、予定申込期間が前倒しで終了してしまったほどの人気となりました。性能、品質、感性、こころざし、すべてが一級品。日本車の最高峰と言えるでしょう。
【日産 GT-R】
一般市販車で「ニュル最速」を目指した日本の誇るスーパーカーです。長らく日本のクルマの馬力自主規制値だった 280馬力を遥かに超えた 480馬力を引っさげて登場しました(マイナーチェンジ後は 485馬力にアップ)。ともかく素晴らしく速い車で、日本の GT カー選手権でも常勝を繰り返し、GT-Rで参戦の場合は他の車とハンデを付けるため余分なオモリを付けなければならないほど強いクルマです。

さて、これらのクルマの諸元・基本性能を表にしてまとめてみました。LFA はエンジンパワー(馬力)があり、車重も軽いです。したがって、パワーウエイトレシオは LFA が圧倒的有利な数値となっています。ところが LFA のエンジンは自然吸気であるため最大トルクは低く、トルクウエイトレシオは GT-R が上回っています。参考として GT-R のライバル、ポルシェ911ターボのデータも付けておきました。
表 LEXUS LFA vs 日産GT-R
項目 | LEXUS LFA | 日産 GT-R |
911 turbo (参考) |
---|---|---|---|
最高出力 | 560ps/8700rpm | 485ps/6400rpm | 500ps/6000rpm |
最大トルク | 48.9kg-m | 60.0kg-m | 66.3kg-m |
最大トルク時回転数 | 1700 - 6800rpm | 3200 - 5200rpm | 1950 - 5000rpm |
最高速度 | 325km/h以上 | 310km/h | 312km/h |
車両重量 | 1480kg | 1740kg | 1670kg |
パワーウエイトレシオ | 2.64 | 3.59 | 3.34 |
トルクウエイトレシオ | 30.3 | 29.0 | 25.2 |
0-100km加速 | 3.7秒以下 | 3.5秒 | 3.4秒 |
値段 | 3750万円 | 861万円 | 2051万円 |
【勝負の結果は】
LFA のエンジンはターボではありません。560馬力をたたき出しますが、その達成回転数は 8,700rpm。F1 のエンジンの流れをくむ典型的な高回転型エンジンでトルクは GT-R ほどありません。そのかわり車重が 1,480kg と極めて軽いため、トルク不足のハンデキャップを補っています。どちらが勝つのでしょうか。
LFA が僅差で勝利でした。いい勝負でした。
表 LEXUS LFA vs 日産GT-R 1/4マイル(0-402m)
項目 | LEXUS LFA | 日産 GT-R |
---|---|---|
順位 | 1位 | 2位 |
秒数 | 11.8秒 | 11.9秒 |
到達時速 | 199.1km/h | 193.3km/h |
動画を見てみると、最初のダッシュは GT-R が優っているのですが、中盤で LFA が GT-R に追いつき、その後は僅差(車の全長1台分)で LFA が勝利しています。最初のリードは GT-R のトルクの大きさと4輪駆動のトラクションの高さに起因していると思います。その後時速100km を越えたあたりでエンジンの回転数が乗ってきたLFAのパワーが本領発揮し GT-R を捉えます。その後は GT-R は食い下がるものの、車重と前面投影面積(≒空力)に勝る LFA がじりじりと引き離してゆくという状況だと思います。
もしかして LFA は負けるかもと考えていましたが、勝ちました。3,750万円のスポーツカーの面目躍如です。高級感だけではなく、走行性能も第一級品であることが証明されました。ただし、100km/h 以下のゾーンで GT-R に後れを取るということは、そのゾーンのカーブが連続し、加速力が重視される中・低速系のサーキット(日本によくあるタイプのサーキット)では LFA より GT-R が速いかもしれません。
また、GT-R はターボエンジン。割と低いエンジン回転域から大きなトルクを発生するため、そのパワーは日常的に利用しやすいものです。それに対して LFA のエンジンは自然吸気で高回転型、低速トルクは比較的低く、その速さを引き出すにはエンジンを高回転に保つ必要があり、どちらからというとマニア向けです。
このように両者は走行性能自体は同じゾーンにあるものの、まったくの同類ではなく、直接競合するものではありません。評価する軸を決めなければ、どちらかが秀でているかを決めることはできません。それぞれに、それぞれを好きなファンがいそうな、どちらも素晴らしいクルマだと思います。
【関連ページ】
超弩級スポーツカー同士のゼロヨン対決
ポルシェ 911ターボ vs 日産GT-R
[動画]レクサス LFA…超刺激的なV10サウンド
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最後までご覧いただきまして、どうもありがとうございました。
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カテゴリ: クルマ・バイク
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