nanao T560i について
2009.11.07/Sat/23:08:43
【CRT全盛時代】
その昔、EIZO という会社は nanao というブランドでした。私がPCを購入したのは1992年、日本のPC市場がNEC一色に染まっていた頃、DOS/VというOSを引っさげてIBM PC/AT 互換機が、そのコストパフォーマンスで衝撃のデビューを飾った頃でした。
その頃は OS は windows 3.1 があり、高解像度のGUI環境がPCで利用可能になりつつあったころでした。当時は液晶ディスプレイは一般消費者向けの価格では存在せず、ブラウン管CRTがPC向けの出力機器でした。
【伝説の名機】
CPU intel 80486DX2 66MHz、搭載メモリ 4MB、HDD 170MB という初めて購入したマシン(IBM互換機)が 408,000円でした。その PC に接続するモニターとして、なけなしのお金をはたいて、248,000円で購入したのが nanao T560i でした。
nanao T560i のスペック
この中で、水平走査周波数上限の 80kHz というのは重要なポイントでした。windows で常用したい解像度 1280x1024 をリフレッシュレート 75Hz で出力しようとすると、1024x75 = 76800 = 76.8kHz の水平走査周波数となります。当時の廉価版モニターでは 65kHz までのものが多く、その場合はリフレッシュレートを 60Hz に落とさざるを得ません。そうするとディスプレイのチラツキが気になるようになります。したがって、水平走査周波数 80kHz に対応したモニタが必要でした。
また、このディスプレイ、定価は 398,000円でした(購入価格は 248,000円)。この高価格を払ってでも所有したい圧倒的な性能がこのディスプレイにはありました。解像度 1280x1024 での文字の表示を見てみると、他の廉価版ディスプレイと比べると、その文字のくっきり感が天と地ほどの差がありました(写真で見せられないのがもどかしい)。
nanao の業務用モニター製造で培った高周波信号の処理技術の高さが存分に盛り込まれた最高級モニターでした。またそのモニターに使われているソニーのトリニトロンモニターも、nanao に納入されるものはソニー自ら高性能品を選別して届けていたという伝説もあるくらいです。
同じスペックで 19インチモニターを搭載した T660i という機種もありましたが、その価格は 498,000円、もう一般個人では手を出しにくいほどの高嶺の花でした。
人間、圧倒的にいいものを見てしまうと、どうしても欲しくなってしまうもので、他のモニターより10万円以上高いこれを購入してしまいましたが、やはりすばらしく良い画質で、買って満足でした。
【液晶モニターの時代へ】
今は、CRTモニターなんて廃れてしまいました。液晶モニターでは、ドットがはっきりわかれるため、特に高度な高周波信号処理を行わなくても文字をくっきり見せることができます。また、「走査」という概念がないため、60Hz のリフレッシュレートだったとしても画面がチラツクようなこともありません。
新しい世代の商品は、旧世代の商品での大きな努力を一瞬で無意味にすることがあります。例えば家庭用ビデオの企画がVHSだったころ、テープの材質や録画ヘッドの技術向上で、じわじわと VHSビデオの画質は高まっていきましたが、そんな血のにじむ努力の結果高めた画質を DVDはあっさりと越えてしまいました。
エレクトロニクス分野の技術革新は早いとつくづく感じます。
-----
最後までご覧いただき、どうもありがとうございます。
その昔、EIZO という会社は nanao というブランドでした。私がPCを購入したのは1992年、日本のPC市場がNEC一色に染まっていた頃、DOS/VというOSを引っさげてIBM PC/AT 互換機が、そのコストパフォーマンスで衝撃のデビューを飾った頃でした。
その頃は OS は windows 3.1 があり、高解像度のGUI環境がPCで利用可能になりつつあったころでした。当時は液晶ディスプレイは一般消費者向けの価格では存在せず、ブラウン管CRTがPC向けの出力機器でした。
【伝説の名機】
CPU intel 80486DX2 66MHz、搭載メモリ 4MB、HDD 170MB という初めて購入したマシン(IBM互換機)が 408,000円でした。その PC に接続するモニターとして、なけなしのお金をはたいて、248,000円で購入したのが nanao T560i でした。
nanao T560i のスペック
ブラウン管 | 17型トリニトロンCRT | |
---|---|---|
AGピッチ | 0.25mm | |
反射低減処理 | ARパネル | |
入力信号 | アナログRGB | |
入力端子 (2系統) | D-Sub9ピン、5BNC | |
走査周波数 (自動追従) |
水平 | 30~80kHz |
垂直 | 55~90Hz | |
標準表示面積 | 306 (H) ×230 (V) mm | |
推奨解像度 | 1280×1024 | |
ビデオ信号メモリー | 30種 | |
映像周波数帯域 | 120MHz | |
消費電力 | 148W | |
外観寸法/重量 (本体) | 410 (W) ×416 (H) ×470 (D) mm/26kg |
この中で、水平走査周波数上限の 80kHz というのは重要なポイントでした。windows で常用したい解像度 1280x1024 をリフレッシュレート 75Hz で出力しようとすると、1024x75 = 76800 = 76.8kHz の水平走査周波数となります。当時の廉価版モニターでは 65kHz までのものが多く、その場合はリフレッシュレートを 60Hz に落とさざるを得ません。そうするとディスプレイのチラツキが気になるようになります。したがって、水平走査周波数 80kHz に対応したモニタが必要でした。
また、このディスプレイ、定価は 398,000円でした(購入価格は 248,000円)。この高価格を払ってでも所有したい圧倒的な性能がこのディスプレイにはありました。解像度 1280x1024 での文字の表示を見てみると、他の廉価版ディスプレイと比べると、その文字のくっきり感が天と地ほどの差がありました(写真で見せられないのがもどかしい)。
nanao の業務用モニター製造で培った高周波信号の処理技術の高さが存分に盛り込まれた最高級モニターでした。またそのモニターに使われているソニーのトリニトロンモニターも、nanao に納入されるものはソニー自ら高性能品を選別して届けていたという伝説もあるくらいです。
同じスペックで 19インチモニターを搭載した T660i という機種もありましたが、その価格は 498,000円、もう一般個人では手を出しにくいほどの高嶺の花でした。
人間、圧倒的にいいものを見てしまうと、どうしても欲しくなってしまうもので、他のモニターより10万円以上高いこれを購入してしまいましたが、やはりすばらしく良い画質で、買って満足でした。
【液晶モニターの時代へ】
今は、CRTモニターなんて廃れてしまいました。液晶モニターでは、ドットがはっきりわかれるため、特に高度な高周波信号処理を行わなくても文字をくっきり見せることができます。また、「走査」という概念がないため、60Hz のリフレッシュレートだったとしても画面がチラツクようなこともありません。
新しい世代の商品は、旧世代の商品での大きな努力を一瞬で無意味にすることがあります。例えば家庭用ビデオの企画がVHSだったころ、テープの材質や録画ヘッドの技術向上で、じわじわと VHSビデオの画質は高まっていきましたが、そんな血のにじむ努力の結果高めた画質を DVDはあっさりと越えてしまいました。
エレクトロニクス分野の技術革新は早いとつくづく感じます。
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| #
2015/08/11 21:09 * 編集 *
2015/08/11 21:09 * 編集 *
Re: タイトルなし
コメントありがとうございました。そうですか!T560iJ とすると、T560i の進化版ですね。当時はこのディスプレイを店頭で見るたびに欲しくなって、ついに陥落しました。目の毒でした。当時 Mac も価格がこなれてなくて大変高価だったのではないでしょうか。当時 Mac でカラーを高解像度で表示すると、一声100万円という話もあったような...。今とは隔世の感がありますね。
> 6年遅れのコメント失礼します。
> nanao T560iJ ですが、私も持っていいました。ブログ主様同様に、画面の美しさに見初められて、そして他の製品に妥協することができずに購入いたしました。購入価格も同じくらいだと思います。画質の良さ以上に、とっても重いのが印象でした。その頃の相方はMac LCIIでしたので、まcの上に乗せないで、モニタの上にMacを載せてました。その後MacやPCをアップグレードしても2台で共有して使えるのが便利でした。今では廃棄してしまったのでとっても懐かしく思います。
URL | 館長 #-
2015/08/11 22:03 * 編集 *
2015/08/11 22:03 * 編集 *
t560i懐かしいですね。考えてみればもう半世紀も前になるのですね。時の経つ速さに驚くとともに、当時の憧れの気持ちを鮮明に思い出せることにもまた驚きを覚えます。
PC-WAVE誌でディスプレイ界のフェラーリと称されていたような記憶がありますが、確かにその画質の美しさは衝撃的でした。
当時としては驚きの解像度1280×1024においても、アイコンの細部に至るまでくっきり鮮明に映し出されている、ダントツの美しさに感動すら覚えました。
自分は当時、頑張って購入したEPSON PC-486GRに合わせて同じくEPSONのハイレゾディスプレイCR5500を購入したのですが、同じハイレゾを標榜していてもこんなに画質が違うのかと落胆したことを覚えています。
インターレスディスプレイCR5500と、ノンインターレスで80Hzまで追従するディスプレイt560iを比較するのが間違いのもとではあるのですが。
その時の悔しさが忘れられず、以降はNANAO=EIZO一筋で離れられません。56T→L565→CX240と使い続けています。56TではケーブルもナナオのBNCケーブルとこだわったのも思い出ですね。
ディスプレイがコモディディ化して久しい昨今、EIZOも毀誉褒貶相半ばする時期もありましたが、映像そのものがもたらす感動をいつまでも追求し続けてもらいたいものです。
PC-WAVE誌でディスプレイ界のフェラーリと称されていたような記憶がありますが、確かにその画質の美しさは衝撃的でした。
当時としては驚きの解像度1280×1024においても、アイコンの細部に至るまでくっきり鮮明に映し出されている、ダントツの美しさに感動すら覚えました。
自分は当時、頑張って購入したEPSON PC-486GRに合わせて同じくEPSONのハイレゾディスプレイCR5500を購入したのですが、同じハイレゾを標榜していてもこんなに画質が違うのかと落胆したことを覚えています。
インターレスディスプレイCR5500と、ノンインターレスで80Hzまで追従するディスプレイt560iを比較するのが間違いのもとではあるのですが。
その時の悔しさが忘れられず、以降はNANAO=EIZO一筋で離れられません。56T→L565→CX240と使い続けています。56TではケーブルもナナオのBNCケーブルとこだわったのも思い出ですね。
ディスプレイがコモディディ化して久しい昨今、EIZOも毀誉褒貶相半ばする時期もありましたが、映像そのものがもたらす感動をいつまでも追求し続けてもらいたいものです。
URL | なかしま #m1zLIDMs
2017/04/19 00:55 * 編集 *
2017/04/19 00:55 * 編集 *
Re: タイトルなし
なかしまさま:コメントありがとうございました。
「PC-WAVE」ですか…。黎明期当時、IBM互換機ユーザー御用達の
雑誌としては、DOS/V User と PCWAVE が双璧だったかと。
どれも、なくなってしまいました。このコンピューター
テクノロジー業界(ビジネス)、立ち止まっていることが
許されない業界なので、「老舗」なんていう存在はなく、
あってもすぐ死んでしまう、無慈悲な業界なんですね。
URL | 館長 #-
2017/04/19 12:49 * 編集 *
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2017/04/19 12:49 * 編集 *
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